そして君は言う。



『先生やっぱり私、妹でいたいな。』




『兄と妹』なんて、いつか君が大人になったらそれぞれの道を生きていかねばならない関係じゃなくて。

出来ることならそれ以上…





『だって妹じゃなくて、先生と私が『先生』と『生徒』なだけだったら…

私が卒業しちゃったら先生と私を繋ぐもの何にもなくなっちゃうもん。』



知ってか知らずか、でも君には『それ以上』なんて選択肢は端から存在してないんだ。





「先生。」

不意に君は艶やかな髪をふわりと揺らして振り返る。



「塾、英語は申し込まないから、また難しいとこ先生に聞きに行くね?」

「…あぁ。いつでも。」



本当の気持ちを言ってしまったら君は困るだろうか?

俺が教師である以上、君が生徒である限り、決して口に出すことの出来ない想い。



真面目な君のことだ。

口に出してしまったら、もうきっと俺に逢いには来ないだろう。



何も知らず君は無邪気に微笑む。

そして俺は何事もないように君に微笑み返した。

     *  *  *