ふたりで図書館に行ったあの日の白い『避暑地のお嬢さんワンピース』は、いかにも高校生の女の子がデートに着そうな雰囲気が俺には新鮮だった。

「彼氏いるの?」

と訊くと、真っ赤な顔で

「いないですよっ!」

と言う南条は今まで何度となく彼女を見てきた中で最もキュートだった。



ワンピースは例の白檀とベルガモットの香りで、その香りは俺の中で「南条の香り」としてインプットされた。

あの香りが鼻孔をくすぐると、風に翻る白いスカートとキュートな南条の笑顔が今も蘇る。

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