「やっぱ、なんか夢があるとさ、人って頑張れたり、気持ちが救われたりすると思うんだよ、俺は。」
俺は南条の隣に石垣の上に座る。
眼の前のグラウンドに熱風が駆けて行く。
「だから俺、南条にも何か
『これは好きだなぁ』とか
『やってみたいなぁ』とか
思えることがあって欲しいと思うんだ。」
蝉時雨が煩い。
俺は少し声を張った。
「だからさ、俺…
それを南条と一緒に探したいと思う。」
南条の瞳が大きく見開かれ、その中に梢から射し込んだ陽光が落ちてきらりと揺れた。
「もし南条がどんなことをしてでもやりたいと思えるような大切なものを見付けたのに、ご両親がどうしても認めてくれない。
もしそういう時は、俺、一緒に話しに行ってやるよ。
だからまず一緒に探そう?
そんな風にやりたくないことから逃げるために無気力になって生きてる、その時間がお前には勿体ないよ。」