不意に先生が言ったので、今度は私が眼を見開く番だった。



「いいな」って…何?



ふとあの日の

『君…いいね。』

の言葉とキラキラの笑顔がリプレイして、
思わず胸が高鳴る。



「相手の言うこと、理解してあげようとしてたでしょ?

分かんなくても一生懸命聞いてあげる、そういうのが俺、大事だと思ってるわけよ?」



(…ん?)



「英語で困ってる人いろいろ見てきたけど、そういう感覚は意外と誰でも持ってる訳じゃないから。

だから南条さんのことは「いいな」と思ったんだ。」



その「いいな」…?



(やだ、私今何期待した?)



一瞬の浅はかな妄想に恥ずかしくなる。

それとも敢えてのこういう言い方をしてるのか?



先生は私の動揺を知ってか知らずか続ける。



「逆に、聞くのとか喋るのとかは、後から全然勉強出来るからね。

だから今は答えてあげられなかったことは気にしなくていい。それはさ…」



先生は一度言葉を切り、私をもう一度その水晶が煌めく鳶色の瞳で見つめて言う。