「彼らのはオーストラリア訛りだね。
分かんなくてもしょうがないよ、日本の学校では聞き慣れないから。」
彼女の瞳に釣られてつい日本の英語教育について熱烈に語りそうになった瞬間、
「ありがとうございました!失礼します!」
と言うが早いか一礼して、改札口へと駆け出して行く。
「えっ、あぁ、うん…」
勢いに気圧されて、髪をなびかせて走る後ろ姿を見送る。
「ふふっ。」
彼女の姿が改札の向こうへと消えると俺は思わず吹き出した。
「…面白い子。」
この街にはあんな高校生がいるんだ。
分からなくても理解してあげたい、応えてあげたいと言葉に真摯に向き合える子。
俺の目指してることがこの街にはあるかもしれない。
(幸先良いな。)
俺はキャリーバッグを引いて再び歩き出した。
* * *