香りの記憶の始まりは、暑い夏の日の朝だった。
君は学校の最寄り駅の裏改札で一人立っていた。
まだ朝だというのに照りつける太陽。
夏空には、飛び乗れそうなほど大きく広がる入道雲。
君は白いコットンのワンピースにざっくりと纏めた長い黒髪。
避暑地のお嬢さんみたいだと思った。
俺と眼が合った君に声を掛ける。
「南条早かったなー。」
君がにっこりと微笑む。
「行こうか。」
そう言って隣に立つと、君は
「はい。」
と俺を振り仰ぐ。
揺れる束ね髪と白いワンピース。
夏の風に煽られて香りたつ白檀とベルガモット。
(あ…!)
胸の中が甘く波打つ。
それが記憶の最初だった。
ただ、その時は既に俺は
君に心を奪われていたように、後になって思う。
* * *
君は学校の最寄り駅の裏改札で一人立っていた。
まだ朝だというのに照りつける太陽。
夏空には、飛び乗れそうなほど大きく広がる入道雲。
君は白いコットンのワンピースにざっくりと纏めた長い黒髪。
避暑地のお嬢さんみたいだと思った。
俺と眼が合った君に声を掛ける。
「南条早かったなー。」
君がにっこりと微笑む。
「行こうか。」
そう言って隣に立つと、君は
「はい。」
と俺を振り仰ぐ。
揺れる束ね髪と白いワンピース。
夏の風に煽られて香りたつ白檀とベルガモット。
(あ…!)
胸の中が甘く波打つ。
それが記憶の最初だった。
ただ、その時は既に俺は
君に心を奪われていたように、後になって思う。
* * *