「南条?」



先生に呼び掛けられて、いつの間にか俯いて耽っていたことに気付く。



分からないことを考えるのは、やめよう。

それよりも…



『南条のことそういう目で見られたくない』



生徒としてでも、妹としてでもいい。

先生に大切にされている実感の余韻に浸りたい。





「先生。」



私は先生の顔を見上げて、先生と真っ直ぐ眼を合わせる。



「先生やっぱり私、妹でいたいな。」

「え?」

「だって妹じゃなかったら…

先生と私が『先生』と『生徒』なだけだったら…



私が卒業しちゃったら先生と私を繋ぐもの何にもなくなっちゃうもん。」



「……」



「一緒にいられる未来なんて…

なくなっちゃうもん。」



「……


そっか、そうだな。」



栗色の前髪の影に先生の瞳が揺れる。

それは少し困ったように、何か切ないように揺らいでいる。