「えっ?何!?」
「お前…
ちょっと周りの目線とか考えろ…」
先生が口元を手で覆ってあからさまに横を向く。
「えっ!…あ!」
私は姿勢を正してニットワンピのVネックの胸元にぎゅっと両手を重ねる。
「違…っ!俺じゃないっ!
だから!その…周り見ろって。」
先生が隣のテーブルをちらりと見る。
それから深い溜め息をひとつ吐き、栗毛の髪をくしゃくしゃ掻きながら言う。
「南条のこと…
誰かにそういう目で見られたくないわけ。
分かる?
ったく。
ついでに言うとお前、制服のスカートももっと長くした方がいいってずっと前から思ってるから。
駅の階段とかあれで上り下りしてるの気が気じゃねぇんだけど。」
先生がお説教を始める。
お説教なのに
『南条のことそういう目で見られたくない』
とか…
何か大切にされてるのかな…なんて勝手に思ったりして、ちょっとにやけてしまう。
「笑い事じゃねぇし!」
「ごめんなさーい。」
私がぺろっと舌を出すと、先生がもう一度溜め息を吐く。
「先生。
マフラー、あったかい…」
マフラーに顔を埋める。
「…貸してやるから。巻いとけ。」
先生はほんのり紅い頬で素っ気ない感じに言った。