「初原先生、でしたね?」

「はい。」

「大事な妹です。

よろしくお願いします。」

兄が先生に頭を下げる。



「はい。責任持ってお預かりします。」

「それと…」

兄はちらりと私を見て、それから先生に向き直る。



「受験以外でも…

今後ともお願いします。」



「分かりました。



幸せにします、必ず。」



「!?」



なんか今先生変なこと言わなかった…!?



「舞奈。」

兄が私の肩を組み、私にだけ聞こえる声で耳元に囁く。



「お前は学校に何しに行ってんだ?」

「えっ?」

「彼は信頼できる人だと思う。

けど、お前受験生なんだぜ?ちゃんと自覚持って勉強しろよ!いいな!」

「!!」



お兄ちゃん…これだけのやり取りで私が先生を好きなこと、見抜いちゃった…?



「じゃあ俺はこれで。」

と会釈した兄が、木苺ジャムみたいに真っ赤な私を置き去りに店を出ていく。