ドキドキしながら通話ボタンを押す。



トゥルル、トゥルル…



「…もしもし?」



2コールで聞こえる大好きな声。



「あ、あの…私…南条舞奈です。」

「南条!

なんだ、こっちから掛けるって言ったのに。」

「うぅん…

私…早く話したかったの、先生と。」

「……」

先生が黙る。

短い沈黙の後に先生が言う。



「可愛いな、お前。」



「!!」



(今『可愛い』って言われちゃった、よね!?)



先生はどんなつもりで『可愛い』なんて言うんだろう?

好きな人の『可愛い』がどんなにか女の子を、私を幸せにするか…

多分気付いてないんじゃないかな…?




「でさ、質問の件だけど?」



ひとりドキドキしていると先生は本題を切り出す。

そうだ…そのことで電話したんだった…



「南条、今日午後忙しい?」



「えっ?」



「あ、ごめん、聞こえなかった?

午後空いてないか、って聞いたんだけど?」



聞こえてたけど、なんで質問の説明が『午後忙しい?』になっちゃうのか分からなくて聞き返したんだけど…



「結構込み入ってんだよね、この問題。

もし良かったら逢って教えるけど?」



耳元で聞こえる愛おしい声が信じられない提案をする。