「先生?」



先生がふふっと笑う。

そして少しだけ私の耳元に顔を寄せて言った。



「今度可愛いって言ったらホントに襲うぞ?」



「!!」



先生はあははっと笑い、私の頭に置いたままの掌で髪をくしゃくしゃ撫でた。



「ていうか、お前にそんなこと出来るわけねぇだろ。」



「え…?」



先生は自分のデスクのバッグを肩に背負うと明るい声で

「さ、帰るぞ!」

と言ってドアに向かう。



「あっ、待って!私まだコート着てない!」



私は慌てて大切なメモをポケットに入れ、机の上のコートとバッグを引っ掴み、先生の後を追って準備室を出る。



ねぇ、先生?

私最近何がなんだか分からないよ?



先生は私を『妹』だって言ってくれる。

けど。

言いかけてやめる意味深な台詞も、いやに密接なアプローチも、壁に追い詰めて言う脅し文句も、全部全部、勝手な期待をしてしまいそうになるよ…