「綺麗だね。」

不意に先生が私の耳元に囁く。



「…うん。」



「南条も。」



(えっ!)



驚いて振り返ると先生の顔が直ぐそこにあった。

それだけでドキドキしてしまうのに、いつになく甘い表情に吃驚して止まるんじゃないかというくらい心臓が跳ねる。



「南条も夕陽が当たって紅くなってるよ。」

先生がにっこり微笑む。



「…あ、あぁ。

そ、そうだよ、ね。」

最早この紅潮は夕陽のせいだけじゃないと思うけど…



「メモ見て来てくれたの?」

「うん。」

「そっか。ありがとう。」

「お礼を言わなきゃいけないのは私の方で!

それに…すみません。途中で帰っちゃって…」

「全然。」



先生は電気を点けて、ブラインドをいつものように閉めた。