(どうしよう。はぐれちゃう!)



そう思った時、少し前を歩く先生が振り返って立ち止まる。

そして右手を伸ばし、ようやく追い付いた私の左手をぐいっと掴んだ。



「!!」



「はぐれるから。」



先生から手…繋がれちゃった。

しかもこんなたくさん人がいる所で。

途端に顔が熱くなる。



次の瞬間、また前を向こうとした先生が、



「あ…」



と言った。

私が熱い顔のまま先生を仰ぐと、先生は長い睫毛に縁取られた綺麗な瞳を閉じていた。



「先生?」



「あ…いや…」



慌てたように眼を開ける。



「どうしたの?」



「いや…

…なんでもないっ!行くぞ!!」



先生は何かに動揺したように見えて、それを隠すようにちょっと俯いて歩き出す。