後ろから車が来て、車道側にいた先生が少し私の方に寄る。

私は意識して僅かに手を伸ばす。

先生と私の振れた手の甲同士が幽かに触れ、次の瞬間、私は先生の手をきゅっと掴んだ。



「…まずいって。」

「大丈夫。うちの学校、この辺から通ってる人少ないから。」

「そういう問題じゃ…」



そう言いながらも先生の掌は私を拒まず、逆にそっと握り返してくれる。



優しく温かい掌。

指先から伝わる温もりに心臓がトクントクンと反応する。



藍色の空に一番星。

暮れなずむ街をふたりで歩く。



(昨日から夢の中にいるみたいだな…)



こんなに何もかも上手くいって、ホントに夢なのかも。



それでもいいや。

先生と傍にいられるなら。

この温もりを感じていられるなら。



夢でも覚めないでいて─