「舞奈さんはご自身の将来について良く考えておられます。

ただやはりまだ子供ですので、考えの甘いところもありますし、
あるいはまた思いをお父様お母様に伝えきれない部分もあると思います。

今日は、差し出がましいかとも思ったのですが、そこのところを私が繋がせて頂ければと思って参りました。」

先生が言う。



「子供ですので」と先生に言われたことに不満を感じなかったわけじゃないけど、
実際こうして迷惑をかけてしまったから仕方ない。

複雑な気持ちで少し俯く。



「ありがとうございます。家庭の問題ですのに先生を巻き込んでしまって申し訳ありません。」

「いえ。

では早速ですが、南条。

君はどうしたいのか話してくれるかな?」

先生が促す。



「私は…

私は東京の外国語大学に行きたいです。

言語の変遷とか成り立ちとか、
あ!あと語学を勉強して国際社会の役に立つことについて考えようと思ってます。」



咄嗟に「国際社会」なんてもっともらしいことを付け加えてみたけど、
先生は見抜いていて、父に分からないくらいちょっとだけニヤッと笑った。