「なんだってお前家出なんか…」

「家出じゃない。ストライキ。」

「変わんねぇって。

余計心象悪いと思わなかったの?」

「……」



俯いた私の頭にぽんと先生の掌が置かれる。

「疲れたろ?少し休め。」

「ううん…大丈夫。」



口ではそう応えるけれど、正直心身共に疲弊しきっていた。

昼からこの時間までほとんど歩き回っていたのだから。



私は先生の肩に頭を乗せる。



「…気持ち良い。」



先生は頭から手を離し、その手で私の肩を抱いてくれる。

懐かしい安息感に吐息が漏れる。



「先生、なんでこんな時間に駅前にいたの?」

「大人には色々事情があるんだよ。」

「彼女に逢ってた?」

「そんなんじゃねぇよ。

DVD返しに行ってただけ。」

「こんな時間に?

あ、もしかしていかがわしいやつだ。」

「普通に映画だよ!今日までの期限なの忘れてたの。

お前なぁ…俺のことどんな風に思ってんだよ…」

「えへへ。」



部屋と先生の温かさに頭が痺れたように、思考も口調もとろんとしてくる。