「先生…ありがと…」
視界が涙でぼやける。
けれど私は先生にその気持ちをすごくすごく伝えたくて、涙を眼に溜めたまま顔を上げる。
「そんな顔で見るな…
行くぞ。」
「どこに…?」
「俺の家。」
「え…」
「10代の、しかも生徒の南条とこんな時間に会ってるのとかヤバいだろ。
さっきの連中に警察呼ぶとか言ったけどぶっちゃけ俺の方が今犯罪者ど真ん中なんだけど?」
そう言って先生は苦笑いする。
「あ…そっか。」
「ほら、行くぞ。」
先生が私の手を取る。
私は先生に寄り添う。
先生の温もり。夏の日の香り。
それらを全身に感じながら、ただ星だけが見下ろしている人気のない夜中の道をふたり手を繋いで歩いた。
* * *