「…ごめんなさい。」

「分かったらほら、携帯。」

先生がもう一方の掌をこちらに差し出す。

私はバッグのポケットからスマホを取り出す。

けれど。

先生の掌には渡さず言う。



「でも…帰りたくない。

私…私、先生といたい…

先生と一緒にいたい!」



「……わかった。

悪いようにはしない。約束する。」



先生が私に頷く。



その真っ直ぐな視線を見て、私はスマホに自宅の番号を出してコールする。

トゥルル…



「舞奈!?」



ワンコールで母の声がする。



「……」

「舞奈なの!?どこにいるの!?」

「……

そうだけど…

でも私…帰らないから!」

「舞奈!」



私の隣でやり取りを聞いていた先生が、

「そうじゃないだろ?ちょっと貸せ。」

と私の耳元からスマホを取り上げる。