「…じゃあ、とにかく家の方に電話だけでもしなさい。」
「イヤ!連れ戻されるだけだもん…」
「南条!」
「……」
「心配かけるな!」
私は唇を噛む。
「心配だと思うくらいなら最初から娘の話を聞けばいいのよ!」
「そうじゃない!
俺に、だ!!」
「!!」
おそるおそる先生を見ると、今まで見たこともないくらいその表情は険しかった。
「無茶するな!俺に頼れよ!
お前見てると危うくて気が気じゃねぇよ!!
俺が通り掛からなかったらどうなってたと思うんだよ!?」
「先生…」
先生がもう一度私の隣に座り直す。
そして私の髪を指で梳くように優しく頭を撫でる。
その大きな手に包まれる感覚に、私はつい堪えていた涙が一粒零れた。