その時不意に



「何してんの?」



声がすると同時に男の手の力がふと緩んだ。



その声は良く知っている声だった。

爽やかで甘くて、心が穏やかになるような、それでいて胸が弾むような声。



声のする方へ顔を上げる。



そこには



私が逢いたくて逢いたくて堪らなかった顔があった。



「せんせ…」



(嘘…なんで…)



「餓鬼にはカンケーねぇ!消えろ!」

「餓鬼とはずいぶんだな。俺、その子の学校の教師なんだけど?

未成年保護条例違反で警察に突き出してもいいんだけどどうする?」

「先生!!」



私は男の手から逃れて先生の胸に飛び込んだ。



男達は舌打ちをして

「うぜぇ、クソ餓鬼共!」

と捨て台詞を吐いて立ち去っていった。