10月の末の深夜は既に寒い。

ブルゾンのファスナーをきっちり引き上げて襟を立てる。



「こんなとこで何やってんの?」



不意に私の前に人影が立った。

顔を上げると堅気のサラリーマンとは言い難い風貌の男が二人。



「行くとこないの?俺らのとこ来る?」

と男がにやにやして訊いてくる。



(怖い…)



見回すけれど、少し離れた所にコンビニの灯りが見えるのみで、駅前には他に人の姿はない。



「違います…あの…父が迎えに来るの、待ってるだけなんで…」

声を振り絞って適当なことを言う。

「嘘。ずいぶん長いことここ座ってんじゃん?俺らが気付いてないとでも思った?

あ。ていうかもしかして誘われるの待ってた?」

「そんなんじゃ!」



私が立ち上がると男の一人が私の手を取った。

「行こうよ。ここじゃ寒いでしょ?」

「やめてください!」

手を振りほどこうとするがしっかりと握られていて思うようにならない。



(どうしよう!

…先生!先生!!)



思わず滲んだ涙で視界が霞む。