「由梨おはよっ!朝からそんな暗い顔して、どうした?」


こいつは、俊介。

…私の幼なじみで、好きな人。


「別にそんなことないよ。」


…何で、こんな可愛くないことしか言えないんだろう…。


「由梨!これあげる!!」


渡された物を見てみると、キャンディだった。


「元気がでる御守り!!」


「…ただの、キャンディじゃん」


私、“そんなことない”って言ったのに…


気にしてくれてたんだ…。


俊介からしたら、大したことない事って知ってる。


でも、私からしたら、こういう事の一つ一つが大切なんだ…。


「由梨ー!先行くぞー?」


大声で私を呼ぶ俊介。


っ本当にこういう事やめてよ…。

諦められないじゃん…。


「待ってよー!」


二人での登校。すごく久々だな…。


      …隣にいられるだけで、幸せ。


学校に行き、授業が終わり、放課後になる。


「由梨!たまには一緒に帰るかー?」


俊介の誘いが純粋にすごく嬉しかった。


でも…少し、いや、かなり戸惑った。


だって、俊介には…


「俊介!!」


私の後ろから、大声で俊介を呼ぶ声が聞こえた。


「ちょっとぉ!今日は私と帰る約束だったでしょ!!」


俊介の彼女だ。


「…まさか、約束忘れてたの!?信じられない!!!」


…彼女と約束してたんだ…。


「ごめん!今日は俺、由梨と帰りたいから…」


俊介の意外な返しがすごく嬉しかった。


            でも…


「彼女でしょ?じゃあ、二人で帰りなよ」


私の言葉に俊介は、驚いたような、寂しいような顔をした。


「…また、明日ね。」


俊介の返しを聞かずに、私は教室を出た。


俊介のばか…。


私の好きな人は、かっこいい。


頭もいいし、運動神経もすごくいい。


おまけに、サッカー部のエース。


そこまで、完璧なのに、すごくチャラい。


だから、沢山の女の子と付き合ってる。


身近な、仲の良い女の子には一通り告白してるらしい。


             …私以外…。


“どうして私には告白してくれないの?”

ってすごく考えちゃう。


“次の彼女と別れたときに、告白してみようかな?”

                とか。


“私が告白したら、付き合ってくれるかな?”


                とか。


“私と付き合っても、他の子と同じで、すぐに別れちゃうのかな?”

                とか…。



女の子にだらしなくて、最低なあいつ。


でも、どうしても好きなんだ。


“最低”とか。“大嫌い”とか。

         すごく思ってる。


でも、それ以上に好きなんだ。

           …好きだ。ばか。