「ふぁあ…」



いつもより少し寝不足な目を擦る



「おっきいアクビ」



隣の席の馨が笑いながら席に着いた


入学式で初めて話してからいつも一緒に居るようになった


今では仲良し。もちろん生田目先輩の事も知ってる



「昨日さ、先輩のID教えてもらったんだ」

「え!本当!良かったじゃん!それで?」

「送れないまま寝不足」



…そんな哀れんだ目で見ないでください


送ろうとしても緊張して何て送っていいか分からないんだもん…


そんな私の心情を悟ったかの様に、

馨はさっきとはうって変わってキラキラした表情で口を開いた



「じゃあ今送ったら?」

「……はい?」

「ほら、携帯出して出して」



言われるがまま携帯を出すと、手際よく文章を打ち始める


「どう?」と返された携帯を見ると、

登録だけされた先輩のLINEのページが開いてあった


先輩の名前が表示されたそのページを見るだけでドキドキする私は末期なのだろうか


まだ送られていない文章を確認すると

【おはようございます
仲里 蓮です
LINE教えてくれてありがとうございました!
よろしくお願いします】

と、当たり障りない文章が並んでいた



おお…さすが馨さま


私が一晩考えても出てこなかった文章をものの数十秒で導き出すなんて!


それと同時に、こんな簡単な文章すら思い付かなかった自分が情けなくなる




「早く送って送って!」

「え?あ…うん」



自分が流されやすいとは思ったことなかったけど…


でもきっと一人だったら、

いつまでも昨日みたいにウジウジして進展しないままだった気がする





少し震えた指先で、送信ボタンを押した