私は一回落ちつこうとベンチに座った。 今はもう何も考えたくない。 スマホをいじる気にもなれず、黙って電車が来るのを待っていた。 「隣いい?」 誰かに声を掛けられ、我に返る。 「あ、どうぞ。」 「サンキュ。」 そう言ってギターを背負った彼は私の横に座った。 この人と会うのなんて最初で最後なんだろうな。 このときは、そう思っていた。