-出会い-

俺は、自分で言うのもなんだが、


世の中で言うイケてるメンズ。


つまり"イケメン"と言われている。


小さな顔にくっきりとした眼。


大きな瞳。


スーッとした鼻筋。


人を虜にする唇。


スラっとした身体。


ケチのつけようがない完璧少年と言われている。

ありがたい話だけど、俺はそんな完璧人間ではない。


頭の中は"バカ"という言葉が似合う。


しかし、誰もそのことは知らない。


俺は、その顔を売りにして"twins"という


イケメンアイドルグループに所属している。


俺は今日も事務所に届いたファンレターを


家に持ち帰り、読んでいる。


俺自身、ファンを大切にしたいという気持ちが強い。



『ひまわりくん いつも応援しています!これからもみんなを幸せにしてください!!!』



『ひまわりくん 大好きです♡』



『ひまわりくんの歌声と横顔がとても好きで…。』




さっきから"ひまわり"という文字が並んでいるが、

ファン、そしてメンバーには


"ひまわり"


と呼ばれている。


理由はすぐに納得するだろう。


俺の本名は、 葵 日向(あおい ひなた)


芸名では?


とも言われるが、これが本名。


この、"葵 日向"という漢字を逆さまに書くと


向日葵(ひまわり)


になる。


それから、小学、中学、高校。


そして高校を卒業したいまでもこのあだ名で呼ばれている。






♪〜




電話だ。


今日もダンスの練習があると言っていたから、それの連絡だろう。

俺はすぐさま電話に出た。


「もしもし…。」


『あっ!ひまわり?今日の連絡なんだけど…』


同じメンバーの 瀧 遊 (たき ゆう)


その名前から"たっきゅう"と呼ばれている。




『いつもやってるスタジオあんじゃん?

そこがさ、工事することなったらしくって

新しいスタジオで急遽、

練習することになったんだけど。

ひまわり1人で来れる?

住所は○○✖️✖️〜〜〜。

なんだけど、多分お前ん家の近くじゃね?』



そこは俺もよく知っている。


高校時代の通学路の途中だった。


「知ってる。俺ん家から近いから1人で行ける。」


『そーだよな!良かった〜。

じゃあ今から1時間後の14時30分に

第4スタジオ集合だから。

他の奴らにはこっちから電話しとく!!

じゃ!』



1時間もあるから、風呂入ってから行こう。





30分後…。



俺は家を出た。


全身、黒統一で、帽子、マスク、メガネという


THE 不審者 という姿で…。


なつかしい道だ。

と言っても3ヶ月前まではずっと通ってた道。


目的地まではおよそ15分。楽だ。


3ヶ月前のことを少し思い出しながら歩いていたらすぐについた。


ずっと思っていた。


この建物は一体なんだろうと。


市民体育館のような外観の


この建物がスタジオだったとは。


少し感動した。(笑)


初めて中に入る。


少しのドキドキ感がたまらない。


…。と言っても広い。


とりあえず、歩いていればなんとかなる精神

の俺はてきとうに男の感というものを頼りに

歩いた。



するとある扉を見つけた。


ラッキー!!俺の男の感も鈍っちゃいねぇ。


その扉を開けると…。



小さな部屋へと繋がっていた。



その部屋には小柄な女の子が1人椅子に座って本を読んでいた。


しかし彼女の瞳は、目の前の本を見つめるのではなく、


何か。目に見えない何かを見つめているようだった…。






俺はすぐにその瞳に恋をした。