「…遅れてごめんなさい」


ファミレスに着いて、ハァハァと乱れる息を整えながら、そう言う。



「紫月ちゃんが遅刻なんて珍しいね」

「俺たちも今来たとこだし大丈夫」


みんなは優しく私にそう言ってくれた。


もうお馴染みの顔。


心、玲奈、赤羽くん、山岡くん、


そして─────


「…あれ?理央は?」


私はメガネを軽くかけ直してから、みんなにそう聞く。


昨日、あのまま電話を切っちゃったからここに来たら謝ろうと思っていたのに。


もしかして、理央のほうが私より遅刻?



「…あぁ、理央なんか寝坊っぽい」


赤羽くんが思い出したようにそう言った。


寝坊?


なんだか、私だけが早く会いたくて仕方なかったみたいで恥ずかしい。


理央にとって、みんなと会うことや私に会うことはそれほど重要ではないことなのかも。



そもそも─────


私は理央にとって0じゃない。



どうしてそんなこと…。



『好き』



昨日の理央の言葉がなんだったのか。


ちゃんと聴きたかったのに。


でも、私から聴くとすごく気になってたみたいで嫌だとか、


本当、人ってこんなにも変わるのかと自分でもびっくりするほど、気を遣ったり考えすぎることが増えた。



「じゃあとりあえず、プチ旅行のことだけ教えるね!」


私が席に着くと、玲奈がそう言った。


旅行…か。

玲奈のお父さんの別荘があるからみんなで行こうって話もちょこっと学校でしていたけど。


まさか、自分がこんなたくさんの友達と夏休みに出掛けるなんて…。



正直、すっごく嬉しい。



早く理央も、来て。