「咲原さん、今日まで本当にありがとう」


「ううん、私でも役に立てて良かったし…気にしないで」


「うん」


水内くんの隣を歩きながら、私は考えていた。


もしかして水内くん、私の気持ち知ってて…告白したの?


「もう少しで予選だね?」


「えっ?うん、そうだね」


「見に行くのかな?やっぱり」


「うん…行ける時は」


「そっか、僕も行こうかな」


「えっ?水内くん、野球そんなに好きだったっけ?」


「いや…もう一度確かめたいんだ」


「…何を?」


「本道の事だよ」


「カイの事?どうして…」


「負けたからな…駆けつけるの、君のこと」


「あっ…」


こないだの…?


「“負けた”なんて別にそんな…」


「思ってたより本気みたいだね彼…だからもう一度彼の気持ち確かめたいんだ」


「気持ち…?」


「でも、僕の君への気持ちは変わらないよ…誰よりも君のこと守りたいと思う…本気だよ?」


「水内くん…」


この時……水内くんに言わなきゃいけない言葉はきっとあったはずなのに、私は何も言えなかった。


「また学校で」と、いつもの優しい笑顔で手を振る水内くんに、私の胸がズキンッと鳴ったのはきっとそういう事なんだ…。