「よーし!ここに決定」
左端の、人のいない木の下で止まってそう言ったかと思うと、なんだかごそごそと鞄をあさっている。
かと思えば、出てきたのはさっき見た人達と同じようなシートで、それをバサバサ広げて床に敷いた。
「ほら、座ろう。」
そう言いながら、彼は今では砂ぼこりまみれになってしまった、履いていた革靴を脱いでシートの上にあぐらをかいた。
「う…ん。」
考えてなかったことがあまりにも色々起こりすぎて、なんだかついていけない。
でも、早くと急かす彼に言われるままとりあえず靴を脱いで、隣に体育座りをしてみた。
座ると、余計木が大きく見えた。
彼のつけている香水の香りとか、向こうにいる人のお弁当の臭いとか、それ以外のなんだかとてもいい香りがした。
時々花びらが落ちてきて、それがまたすごく素敵だった。こんなの、テレビでしか見たことがなかった。
「で、ジャジャーン!」
私が桜ばかり見ていると、隣で彼はそう言って鞄から朝見たおにぎりを三つ取り出した。それから、お茶とコーヒーも。いつそんな準備をしていたんだろう。
小さい鞄に、見事に詰め込んで、まるでドラ○モンのポケットだ。
私がまだ幼かったら、魔法みたいだと騒いだかもしれない。