「おぉ!やっぱすっげぇわ。」

立ち止まって、彼はそう言った。
それがあまりにも急すぎて、思わずその背中に突っ込んでしまった。

「なあ、見ろよ、ほら!」

見ろよと言われても、彼の広い背中しか見えない。というか、視界が一面黒だ。これなら、目を瞑っているのと同じ。

「真っ黒。」

「馬鹿野郎、ほら、見てみろって!」

ぶつけた鼻をさすりながら、これは絶対赤くなっているぞ、と思った。というか、もはやへこんでいてもおかしくないくらいの痛さ。ただでさえ低い鼻がえぐれてたら、確実にこの人を呪い殺してやる。

そんなことを考えていたら彼が、私のことを馬鹿野郎だなんて言うから正直、少し、いや、結構腹が立っていた。

でも、彼の向こうに広がる景色を見た瞬間、そんなイライラがぶっ飛んでいったんだ。

そこは小さな公園だった。遊具も少くて、ブランコとシーソー、鉄棒しかない、昔ながらの公園。