「女の子だなぁ。」

私の呟きを聞き逃してくれればいいものの、彼は私の方を見てそう言った。

「…痛いのが嫌いなだけ。」

白いほうが可愛いから、好かれるから、なんてそんな理由じゃない。そんなに女の子じゃない。慌てて言い返した私に、ふーんと彼は頷いた。

「で、どこ行くの?」

右を見れば、似たような家が続いていて、左を見れば、さっき駐車場で見たような色んな種類の車が黒い排気ガスを出しながら規定の速度で走ってゆく。

ここまで来るのに、20分以上かかったのにこれでは、私の家の近所とあまり変わらないじゃないか。

「んー、もうすぐだった気がするんだけど。」

彼は、あれ?違ったかな、なんて言いながら寝癖だらけの頭をポリポリかいた。

改めて考えたら、やっぱりおかしいじゃないか。ある日突然イケメンの優しいお兄さんができました、なんて、漫画レベルの話で、同級生に知られでもしたら、嫉妬と妬みで何を言われるかわからない。変われるものなら変わってあげたいくらいだけど。

色々な言葉にごまかされてはいたが、車に乗ったときから感じていた不安はいっきに強くなった。

彼についてきて大丈夫なのかな。
っていうか、まず本当に彼の言葉を素直に信じていいのだろうか。

コンクリートの地面に、二人の影が並んでいる。私のに比べて、彼の影はあまりにも大きい。そのくせ細い。世でいう細マッチョというやつだろうか。

チラリと少し前を歩く実物を見る。会社の偉い人らしいけど、黒いTシャツに寝癖って…。申し訳ないけど、これじゃフリーターに見えても仕方ない。

「あ、ここだ。」

そんな失礼なことを考えていた時、彼がそう呟いて振り返った。


ある意味、少しドキリとしてしまった。