「え!ちょっと勝手にずるい!」

「ルールを決めるのは年上の特権。」

「こんな時だけもっとずるい!」

「ね?わかった?」

赤信号。急に彼が私の方を向いて目が合う。そんな何気ないことに、少しドキドキしてしまう。こんなの、本当にずるい。

「…わかっ…た。」

「さすが聞き分けのいい可愛い妹だなぁ。はい、いいこいいこ。」

ふいに、子ども扱いするように私の頭を撫でた。ずっと昔、満点をとって帰って母に見せた時、こんな風に撫でてもらったことがあった。不思議と落ち着くこの感じがなんだか懐かしい。私に兄が居たら、今まで1人だった日々が、本当はもっと楽しかったのかもしれない…なんて思ってしまうくらい、それは温かかったんだ。

「私、子どもじゃないもん。」

なんだか心が飲み込まれてしまいそうで、怖くなってその手を振り払った。

「俺の妹は、すぐ照れて可愛いなぁ。」

「…なんか、馬鹿にしてますよね?」

「んー?あれー?聞こえないんだけど。」

「馬鹿にしてる…よね?」

「ははは、良くできました。」

「っていうか、問題はそこじゃなくて!」

「可愛い子は、いじめたくなる。でしょ?」

「……ほんと大人気ない。」

「ん?誰が大人気ないって?誰?」

「………、いじわるっ!」

「言わなきゃお兄ちゃん泣いちゃうよ?」

「…勝手に泣いてください!」