「…そんなに、優しくしないでください。」

窓の外を眺めるふりをしてポツリと呟いた。なんて可愛くないんだろう、私。

「そう言われても、妹には優しくするものでしょう?」

「それはっ…正論だけど、まだ私、正式な妹ではないので。」

そんなに優しくされる覚えはありません、と付け加えておいた。

「ごもっとも。」

すると、あはは、と彼が笑う。

「でも、この1ヶ月は兄妹のお試し期間なんだからさ、仮にでも笑は俺の妹でしょ?大丈夫!とことん甘やかすって、もう決めてるから!」

任せとけなんて言うから、なんだかこの先が心配になったんだ。

「だめなお兄ちゃんですね。」

そう言って私は少し笑ってしまった。

きっと彼は、いいお兄ちゃんになれるのだと思う。でも私は。私は、いい妹になれるのだろうか。

「いいの!はい、提案です!これから敬語は禁止!俺は年上だけど、兄妹に歳は関係ないからね。あと、優って名前で呼んでね。お兄ちゃんならなお良いなぁ…破ったら罰ゲームな!以上!」