「じゃあ、恥ずかしいついでにもう一つ。」

視界の端で、彼が優しく笑うのが見えた。

「笑が貯めてた初めて、全部俺がもらうから。これから2人でなんだってできるんだ。何しようって考えるだけで、俺ずっとワクワクしてる。だから今すごい楽しい。」

なんで、彼はこんなに生き生きとしているのだろう。
なんで、昨日までは会ったこともなかった他人に、そんなことを言えるのだろう。
ねぇ、なんで。そんなに優しい言葉を私にかけるの?

もし、私が彼を好きな立場ならとんだ思わせ振り野郎だ。誰にでも言えるような社交辞令なのだとしたら、今すぐぶん殴ってやりたいくらい罪な男。

「俺といるとね、笑も毎日笑うようになるよ」

覚悟しておけよ、と彼は付け足して私の頭にポンと手をのせた。

その手が温かくて。

彼の言葉を、彼のことを、信じてもいいのだろうか。そう考えてしまった。