『…私、こんなんだから、
そのせいで凪原君のこと身勝手に振り回して、傷つけてばかりで…。
でも、凪原君の戸惑う顔とか、心配してくれるときの顔とか、心の底から笑ったときの顔とか。
たくさんの一面を覗き見ることが、本当に楽しくて、嬉しかった。
とても綺麗で、その全てがすごく大切だった』
髪にささった紅色の花かんざしがシャラリと揺れる。
咲希ちゃん、このかんざしにおまじないをしてあげる。
そう言って髪を結ってくれたお姉さんが鏡越しに私に向かってウィンクをしたのを思い出した。
咲希ちゃんが、自分の思いに素直になれますように。
上手く言えなくていい
ぐちゃぐちゃでもいい
伝えたい想いを言葉にして、大切な人の前で素直でいられますように。
どんなきどった言葉よりも、咲希ちゃんの素直な言葉が相手にとって1番綺麗だから。
花かんざしが薄明かりを反射して、再びシャラリと揺れる。