浴衣のたもとから取り出したハンカチで、彼の額や頬の伝う汗を拭く。



『…凪原君はなんにも悪くない。

悪いのは全部私。



勝手に凪原君を避けて、傷つけて。


勝手にこんなことにまで巻き込まれて。



それなのに、もうだめだって思った一瞬、1番に思い浮かんだのは、凪原君だった。



自分から突き放したくせに、助けてなんて都合のいいこと言って、ごめん。




いつも、迷惑かけてばかりで、そのくせ凪原君になにもしてあげられなくて、




ごめんね。』

そう言って小さく笑った。






その瞬間凪原の澄んだ瞳が大きく揺れると、
そこからとめどなく、とめどなく、宝石のように綺麗な滴が溢れ出していた。



凪原の涙を流す姿に最初はすごく戸惑ったけど、あまりにもその姿が綺麗で、意地らしくて、いつも凪原がしてくれているように今度は私が彼の涙をそっと拭ってあげた。



凪原の長いまつ毛から私の浴衣のたもとに、ぽろりと透明な滴がこぼれ落ち、紫色の花びらの上に滲んでいく。


お母さんも、この浴衣を着ていたっておばあちゃんが言っていたっけ。