最初に口を開いたのは、凪原だった。


「…ごめん。

あんたにこんな怖い思いさせるなんて。




…あんたはずっと俺を待ってくれていたのに



俺、


いつも遅くて、

…ごめん」

こんなときまで、私ではなく自分を責める凪原の優しさに胸が痛くなった。


凪原を避けていた自分にとって、責めて罵られることよりも、なによりこうして優しくされることのほうが辛かった。




どうしてこの人は、こんなにも無垢で綺麗なんだろう。


私が自分勝手に避け続けた後でもなお、こうやって私のために駆けつけてくれる。

私が辛いとき、いつもそばにいてくれたことがどれだけ心強く、どれだけそれが私を救っただろう。


私の隣に腰掛けて、まだ少し息を弾ませ、頬を伝う汗を拭いながら制服のネクタイを緩める姿は相変わらずかっこ良くて、綺麗だった。