しかし、その言葉は彼には届かない。



勝手に突き放しておいて、なにをいまさら虫の良いことを言っているのだろう。



でも、こんなことになるならもっと早く自分の気持ちに素直になればよかった。


彼に、はっきり好きだとなぜ言わなかったのだろう。


河口さんを諦めた私は、凪原君さえも失ってしまうんだろうか。




…そんなの、嫌だ。



お願い、一人にしないで。



私はもう誰も、失いたくない。




「可愛いね〜、凪原君、助けてーだってさ。 こんなところにあんたを1人放っておくような男が今更助けに来てくれるわけなんてないだろ。

凪原君は来ねーよ。」


ギャハハと下品な笑いを浮かべる2人の男達を目の前に、ああ本当に終わりなんだと思って、足元の石段に視線を落とし諦めかけていた






その一瞬、薄明かりに照らされていた石段に影がさす。