「おねーさん?? 今一人?こんなとこいないで、良かったら俺らと遊ぼうよ」





聞いたようなセリフだったけど、全く聞き覚えのない声に心臓が冷え、体が強ばる。

目を開いて見上げた先には、全く知らない男2人がこちらを見て、下品な笑いを浮かべていた。




「え、めっちゃ美人じゃん。ラッキー!!
ほら、早く俺らと遊ぼうよ、1人じゃつまんないだろ。」


1人が腕を掴んで、無理やり立ち上がらせようとする。掴まれた腕が痛い。


凪原とは全然違う容赦のない力。彼が今まで、どれだけ優しく腕を引いてくれていたのか、こんなときに実感するなんて、皮肉だと思った。



生憎、携帯の電池は死んでいるしこんな人通りの少ないところからでは、助けを呼んでも届きはしない。ましてや、もうすぐ花火が上がり始めるはずだから、それにかき消されて私の声なんて蚊の鳴く声も同然だった。




抵抗も虚しく、じりじりと掴まれた腕に力が込められていく。



痛みと恐怖で涙が出てきた。ぽとりと、目からこぼれ落ちる滴が石段に染みを作るのが見える。




「泣いてるの? 泣き顔もすごい可愛いんだけど。大丈夫だよ、俺ら優しいから。3人で楽しいことしよ?」



もう無理だと思ったとき、思わず言葉が漏れ出していた。





『…助けて、なぎ…は…く…ん、




凪原君、…助け…て…!』





とっさに出てきたのは、弟の悠ではなく、凪原 司の名前だった。