人混みに飲まれまいと必死に人通りの少ないところを選び歩くうちに、本殿の境内裏にたどり着いていた。

ちょうどいい高さの石段を見つけたため、そこにゆっくりと腰掛けた。


携帯の電源ボタンをカチカチと押してみるが、画面は真っ暗のままだった。

浴衣の着付けに必死になるあまり、充電を忘れてしまったのがいけなかったと自分のうっかり具合にため息をつく。


でも、むしろ良かったのかもしれない。

有無を言わせずに帰った私を菜々達が心配しないはずがない。


きっと、着信が一杯入っているだろうなと思うと少し申し訳なく思った。




本殿は、神様を祀る神聖な場所であるせいか近くに屋台や催しは見られず、辺りはひっそりとした静寂に包まれていた。


慣れない下駄で痛めた足を休めながら、凪原のことを考えると胸が苦しくなった。


今日、彼が姿を見せなかったのはきっと私に気を遣ってのことだろう。

私が彼を避けていることを敏感に感じ取って、私がお祭りを楽しめるように遠慮したに違いない。


そう思うと、今日私は色んな人に気を遣わせて迷惑をかけてばかりだなと暗い気持ちになる。


あれだけ避けておいて、凪原に浴衣姿を見てほしかったとか、凪原と一緒に花火を見たかったなんて、自分勝手だと思われても仕方ないなと思い、小さくため息をつく。





菜々、中川と楽しめているかな。

私は無理だったけど、それでもどうか菜々は好きな人と一緒に楽しい時間を過ごせますように。



ぎゅっと目を閉じて、本殿の神様に願った。