真っ暗な部屋で1人途方にくれていると、相変わらず奏人からの着信が入る。


こんなに何回もかけてくるなんて、なにかあったのだろうか。祭りに行かないと最初から言うと、面倒だと思い、適当に濁しておいたのがいけなかったのか。


観念して、しぶしぶ電話をとる。



「お前っ! 何回かけたと思ってんだよ!!」



こちらのもしもしの声も待たずに、電話口の奏人が声を荒げる。
なにを感情的になっているのか理解できなくて、不機嫌な声で返事をする。


「…なに」

「有明がお前のことずっと待ってんたんだよ なのに、お前が来ないから」


意味が分からなかった。

有明が俺を待ってるなんて、そんなはずがない。

冷静に返事をしようかと思ったが、さすがに今のタイミングで有明をネタにされたことに腹が立って、怒りを込めて返答する。



「そんな訳ないだろ。こんな時まで、からかうのはやめろ。じゃないと、今本気でお前のこと殴ってやりたくなる。」


ちっと舌打ちが電話越しに聞こえてきて、もうこのまま電話を切ってしまおうかと思っていると声の主が変わる。



「もしもし、凪原君? 私、菜々だけど。聞こえてる?もしもし」

宮下の高い声が響く。

みんなもう、これ以上俺の領域に土足で踏み込んで来るなよと叫びたくなった。電話を切る気にもなれず、耳から離して机の上に置いて、代わりに手で顔を覆った。


もうどんな言葉も俺を救えない。今はもうなにも考えたくない。




「凪原君、聞いて。返事をしてくれなくていいから、私の話を聞いて。」


宮下の高い声は、受話器に顔を近づけていなくても十分に聞き取れた。







そして、宮下が全てを話し終えたとき、俺は自分がどんなに馬鹿だったかを思い知った。


机の上の携帯をひっつかんで、転げるように家を出ると迷わずまっすぐに走り出していた