先ほどから、着信音が鬱陶しいほど鳴り響いている。

電気もつけていない真っ暗な部屋で、ぼんやりと光るディスプレイに表示されているのは、全部奏人の名前だった。



時刻表示を見ると、もうしばらくしたら花火が上がり始める時間だった。


自分の部屋の窓越しに見ると、空はすっかり闇に包まれていて、所々に星が瞬いている。




昼間の出来事が、時間が経ってもなお、軽くなるどころか一層重みを増して鉛のように胸に沈み込んでいた。

なんの気力も湧いてこず、制服から着替える気にもなれない。



嫉妬。



それが今の自分を襲う唯一の感情であることは、分かりきっていた。

俺はあの男に嫉妬している。

結局、あいつが有明のなんであるのかは分からず終いだったが、あいつの言い放った言葉が脳内に何度も再生される。




咲希のこと、1番理解しているのは僕です。



有明にとって、あいつが特別な存在であることは嫌でも分かってしまう一言だった。

奴に対して、有明が心を許していることが彼女の態度からも伺い知れた。



今日の祭りに顔を出す気になれなかったのは、今の自分では、有明に対してなにをするか分からないと思ったからだ。


また彼女に避けられ、視線をそらされることが辛くて、


彼女に自分の中で渦巻いているこの醜い感情をぶつけてしまうことが怖くて、


きっとあの瞳を見たら、もう自分の理性を抑えることができなくなる気がして。


それに、自分がいたのでは有明の方も祭りを楽しめないだろうと思ったからでもあった。



これから自分はどうしたらいいのだろう。


報われないこの気持ちは、どうしたらなくなるだろう。