朱塗りの槍を握り締め、俺は珍しくボンヤリとしていた事に気づく。

…随分前の事に思えるな。

思えばあれが、乙女との縁の始まりか…。

そうなると、この槍もなかなかの働きをしてくれたと言える。

ならば。

「あまり邪険にするのも不憫というものか」

一人呟く。

共に死線を潜り抜けてきた相棒だ。

たまには酒を酌み交わすようなつもりで、存分に振るってやるのも一興。







俺は朱塗りの槍を携え、鍛錬場へと足を運ぶのだった…。