「そんで?あとどれくらいあるんだよ。てか本当に引っ越しの準備してんのか?」

「もう住める状態になっているはずよ」

「まじで?!さすが麻友ちゃん!」

「今日からもう華乃さんと住むの?でもまだ入籍してないからそれからの方が」

「そうだな。入籍してからにするよ」

「…なんだか人が変わったみたい。龍成がこんなに物わかりがいいなんて」


そりゃ自分の自由の為ですから。


「あとは上層部よ。気合い入れてね。忙しいから全員は揃ってないと思うけど」

「普通そっちの挨拶が先じゃね?」

「色々と順番があるのよ」

「はあ」


上層部ってことはさっきの専務もいるのか。エレベーターで一緒だったの、気づくか?


──上層部は一人一人部屋が設けられていて、半数は席を外していた。誰もいない部屋を確認する度、麻友ちゃんの表情は険しくなった。


「麻友ちゃん、顔怖いんだけど」

「あら、悪かったわね。次で最後よ。橘常務。あなたも会ったことがあるはずよ」


次で最後?てことは専務もいなかったのか。


橘常務の部屋の前に来た途端、麻友ちゃんの表情は柔らかくなる。