「う、うちの娘でよければ…」

「華乃さんだから結婚したいと思ったんです」

「ふふ。龍成ったら、華乃さんにのめり込んでしまってるみたいですの」

「それはそれは、喜ばしいと申しますか、華乃も龍成さんに一目惚れしたと言っていたので」

「あら!それじゃ二人が結婚するのは運命だったのね!」


あいつ、結構やるじゃねぇか。本気でそんなこと言ってたら困るけど。


「龍成さん、華乃を幸せにしてやって下さい」

「はい、お父様」


あいつはあんたらの幸せのために結婚するんだよ。離婚したあと聞かせてやるか。



──無難に挨拶を終え、あいつの親父が部屋から出て行った。


やることやったし、俺も帰って引っ越しの準備でも…


「龍成、会社のことを勉強するのよね。そこに資料を置いたから一通り目を通して。それから全ての部署に顔を出しに行くわよ」

「いや、俺帰って引っ越しの準備するから」

「それはあとからでもできるでしょう?少しも時間を無駄にできないの。あなたには早くお父様の代わりをしてもらわなくちゃ」

「…麻友ちゃんさ、なんでそんな急いでんだよ」


どう考えても焦りすぎだろ。親父がもうすぐ死ぬわけじゃねぇっつーのに。