少ししてドアがノックされる音と共に、秘書の声が外から聞こえる。


「奥様、桜庭部長がお越しです」

「はい、どうぞ。龍成も立って」


立ち上がりあいつの父親を迎える。


「失礼します。ご子息もご一緒でしたか!この度は、うちの娘と…」


俺に気付いた途端、いきなり深々と頭を下げるあいつの親父。


「桜庭部長、先に息子に挨拶させてちょうだい。その為にここに来たのよ」

「あ、申し訳ありません!」

「お父様、お顔をお上げ下さい」

「龍成さん…」


ゆっくりと頭を上げるあいつの親父。


「失礼しました。挨拶もせずお父様だなんて」

「とんでもない!」

「初めましてお父様。神田龍成と申します」

「龍成さん、華乃の父の桜庭雅紀です。これから末永くよろしくお願いします」

「まあ。桜庭部長ったら、龍成が許しを得るのが先じゃない?」


麻友ちゃんはクスクス笑ってるけど、残念ながら末永くは無理なんだよな。


「そうですよお父様。では早速ですが、お嬢様と結婚させて下さい」

「ち、ちょっと、龍成ったら」


どうせ結婚は決まってるんだ。長ったらしく話す必要はない。