追いかけてくる崇憲の言葉は綺麗にスルーできるのに、龍成の言葉はなぜか執拗に耳に残る。

それがわたしを更に不快にさせる。


「華乃!」

「離せ!触るな!」


崇憲に腕を掴まれ、夜中だというのに大声を出す、25にもなった馬鹿な女。


「待てって!少しくらいちゃんと話させろよ!」


馬鹿な女に触るなと言われているのに、華麗に無視をする元ヒモ男。


なんとも滑稽。なんともはた迷惑。

だけどわたしはそう思ってはいても、客観視できる今の自分に笑えていた。


「ふっ、あんたと話すことなんてない。ぶふっ」

「いや、今笑うとこじゃねぇだろ」

「そうだけどウケる。あんたもわたしも馬鹿すぎて」

「真面目に聞けよ。俺、ずっと華乃に会いたかった。お前は会いたくなかったかもしれないけど」

「わかってんなら会いにくるなよ」

「俺、華乃にひどいことばっかしてきた。だから誠意をもってお前に詫びたいんだ」

「誠意があるなら二度と会いにこないで。終わった男と会ってなにが楽しいの」