それがいつの間にか辛いと思っていた時間も場所も、愛しくてたまらないものになっていった。

今はあの頃と全く違う辛さがある。

辛さにも色々あるんだ…。


「華乃ちゃん…」


また考えるだけで涙が流れる。

こら、ば華乃。お姉ちゃんが困った顔してるでしょうが。いつまで泣く気なの。


「ごめんね、お姉ちゃん」


涙を拭いながら笑おうとするも、うまく笑えない。


「…もしかして離婚したくない?」

「……そんなわけないでしょ」


お姉ちゃんの言葉に、胸が小さく疼いた。


「もしかしてそれで泣いてたの?」

「──」


否定しないということは肯定を示している。

でも今さらいくら否定したところで、お姉ちゃんにバレバレな気がした。

さすがに呆れるよね。いくら何でも偽装結婚の相手を本気で好きになるなんて。


「彼は華乃ちゃんの気持ち知ってるの?ちゃんと伝えた?」

「…伝えてない。けどもしかしたらバレてるかも」

「離婚したくないなら言わなきゃだめじゃない!…って言えないか、華乃ちゃんの立場なら」