「か、華乃姉…」

「おやすみっ」


無理矢理ドアを閉めた。


──ごめんね、來乃。

いつか笑い話に出来る日がきたらちゃんと話すから。

今はどうしても無理なの。ごめん、ごめん……。


ドアのすぐ横にあるベッドに横向きに寝そべり、必要以上に小さくなってまた声を殺して泣く。


どうやったら涙は枯れるの?泣いていたってどうしようもないのに。

…泣いたら忘れられるのかな。


泣くことで早く忘れられるなら、いくらでも泣いてやる。涙と一緒に、この気持ちも流れていけばいい。



─────


たくさんたくさん泣いたら疲れて眠れるかと思ったら、なんとなく自分の部屋に違和感を感じ眠れなかった。


マンションの広い部屋、広いベッド。それはもうわたしの帰る場所になりつつあった。

自分の部屋なのに他人の部屋のように思えてしまう。それだけ龍成との生活はわたしの中で色濃いものだったんだろう。


…それだけじゃない。


龍成が一緒にいたから。龍成の呼吸も体温も感じられたから。

だから幸せを感じながら眠れた。