離婚届を手に取り、龍成は真剣に目を通す。

少しだけ落ち着きを取り戻した心臓は、今度は必死に現実を受け止めようとしていた。


「ん、完璧。ありがとな、明日出しに行くわ」

「わ!わたしも行く!」

「え?」


思わず口にしていた。

きっと少しでも一緒にいたかったんだと思う。


「こ、婚姻届は龍成が出したんでしょ?今度はわたしが出したい」

「今度って…。別にいいけど」

「何時?明日ここに迎えに来るから」

「…じゃあ二時」

「わかった。荷物は今まとめるからいいよ。元からそんなにないし」


立ち上がり龍成に背を向ける。


「遅くなっても家に入れんのか?」

「大丈夫。來乃が起きてるだろうから」

「あ、そ。なにか手伝うか?」

「いい。龍成はなにもしないで」


足早に着替えがある部屋に行き、荷物を詰め込む。


「──」


堪えていた涙が堰を切ったように流れ落ち、手で擦るように拭う。


最後にこうなることはわかってたでしょ。それが早くなっただけ。心の準備ができてなかっただけ。

だから泣く必要なんてないんだから。悲しむ必要なんてないんだから。