震える手でペンを受け取る。


「お父さん、本当に本当に大丈夫なんだよね?」

「ああ。華乃の親父さんは俺が必ず守る。もしも何かあったらすぐ俺に連絡しろ」


その言葉を聞き離婚届に向き合うと、龍成の綺麗な字ですでにサインされていることに、また涙が出そうになる。


婚姻届も書いてないのに離婚届を書くって…。

わたしの人生ってほんと笑える。


「誤字脱字厳禁ですよ」

「わかってるから。見ないで、気が散る」


わたしが記入している間、龍成はこちらを見ずに頬杖をつき、宙を仰ぎながら静かに待っていた。

わたしはただでさえ書きづらい手で、字が震えないようにするのでいっぱいだった。


この時間がわたし達の夫婦でいる最後の時間なんだ。

離婚届を提出していなくても、お互いが記入するだけで夫婦の終わりを告げている気がした。


時間をかけて全て記入し終わり、ペンを置く。


「お待たせ」


わたしの声に反応して、龍成は離婚届に目を向ける。


「間違えず書けたか?」

「…確認して」